第4編 有機化合物

第3章 アルコールと関連化合物

1アルコールとエーテル 2アルデヒドとケトン

3脂肪族カルボン酸と酸無水物 

4エステルと油脂

 

 アルコールとエーテル

アルコール

炭化水素の水素原子を〔 ヒドロキシ基 -OH 〕で置き換えた化合物をアルコールと総称する。アルコールの名称は-OHが結合した最長の炭素鎖を主鎖として,それに相当する炭化水素名の語尾のeolに変える。簡単にいえば,アルカン名の「ン」を「ノール」に変える。-OHの位置が小さくなるように,炭素鎖に番号を付け,-OHの位置を示す

 
 

☆ C3個以上のアルコールには異性体が生じる。

  例 C4H9OH     主鎖C41位にOH  1−ブタノール

 
 

アルコールの分類 (次の分類@とAは混同しやすいので,しっかり覚えること)

@分子中の炭素の数による分類

炭素数の少ない(C=6以下)アルコールを低級アルコール,炭素数の多いアルコールを高級アルコールという

 

A分子中の -OHの数による分類

分子中にヒドロキシ基-OH1個のものを一価アルコール,2個のものを二価アルコール,3個のものを三価アルコールという。2価以上のものを多価アルコールという。

 

B分子中の -OHが結合している炭素原子による分類

ヒドロキシ基の結合している炭素原子に,炭化水素着Rが何個結合しているかによって,第一級アルコール,第二級アルコール,第三級アルコールに分類される。右にC4H9OHの各異性体を分類する。Rは炭化水素基(メチル基,エチル基など)

 
 

【アルコールの性質】

アルコールの沸点 

アルコールは分子間で〔 水素結合 〕を形成するので,分子量の似た炭化水素に比べ沸点・融点が高い。アルコールの沸点は,炭素数が増加するにつれ分子量が大きくなり 〔 ファンデルワールス力 〕が大きくなるので高くなる。また同じ炭素数のアルコールでも第一級アルコール,第二級アルコール,第三級アルコールの順に,第一級どうしでは,直鎖構造の方が枝分かれ構造よりも沸点が高くなる。これは-OHのまわりの構造が混み合っていると水素結合が形成しにくくなるためである。

 C4H9OHでは 
 

アルコールの水への溶解度(水への溶けやすさ)

アルコールの水への溶解度は〔 炭素数 〕が少なく,〔 ヒドロキシ基 〕の数が多いほど溶解度は大きくなる。例えば,炭素数が3のプロパノールまでは水と任意の割合で溶け合うが,それよりも炭素数が増すと,溶解度は低下する。

 

(理由)アルコールの炭素鎖の部分は極性が小さく,極性分子である水とはなじみにくい疎水性(または親油性)である。一方,ヒドロキシ基は極性が大きく水となじみやすい親水性であるため,炭素数が増すと疎水性が強くなり,ヒドロキシ基が増すと親水性が強くなるためである。

 
 
 

アルコールの置換反応(ナトリウムとの反応)

 アルコールR−OHに金属ナトリウムを反応させると,水素を発生し,ナトリウムアルコキシドR−ONaを生成する。

      2R−OH + Na → 2R−ONa + H2

 

アルコールの酸化反応(脱水素反応)

アルコールを酸化すると,アルコール分子中の水素原子と酸化剤(酸素原子)が反応して,水ができる。つまり,アルコール分子から水素原子が2つ外れる反応

 
 

このように,第一級アルコールを酸化すると〔 アルデヒド 〕,第二級アルコールを酸化すると〔 ケトン 〕が生成する。また,第三級アルコールは酸化されない。

 

【メタノールとエタノール】

メタノール(CH3OH)はメチルアルコールともいわれ,水と任意の割合で溶け合う有毒な液体である。一酸化炭素と水素から合成@される。

エタノール(CH3CH2OH)はエチルアルコールともいう。水と任意の割合で溶け合う液体で,デンプンやブドウ糖(グルコース)C6H12O6を酵母などの微生物によって分解すると生成する。これをアルコール発酵Aという。工業的には,エチレンに水を付加Bさせてつくる。

 

 @ 〔 CO + 2H2 → CH3OH 〕   A 〔 C6H12O6 → 2CH3CH2OH + 2CO2 〕   

B 〔 CH2CH2 + H2O → CH3CH2OH 〕

 

【エーテル】

 酸素原子に2個の炭化水素基が結合したR-O-R’を〔 エーテル 〕といい,-O-の結合を〔 エーテル結合 〕という。エーテルは1価アルコール(二重結合や三重結合をもたず,-OH1つだけもつアルコール)と構造異性体の関係にある

エーテルの命名は炭化水素基(アルキル基)の名称をアルファベット順に並べて,その後に「エーテル」とつける。

 
 

例題 C4H10Oで表される構造をすべて書け。

 

アルコール C4H9OH4

 CH3CH2CH2CH2OH  CH3CH(CH3)CH2OH  CH3CH2CH(OH)CH3   (CH3)3COH

エーテル

 CH3OCH2CH2CH3  CH3OCH(CH3)CH3   CH3CH2OCH2CH3

 

 分子量が同程度のアルコールとエーテルの比較

 
 

ジエチルエーテル

ジエチルエーテル(CH3-CH2-O-CH2-CH3)は単にエーテルともいわれる揮発しやすい(蒸発しやすい)液体で,麻酔性がある。その蒸気は空気よりも軽く,引火しやすい。水には溶けにくく,有機化合物をよく溶かすので,溶剤として用いられる。エタノールを濃硫酸を用いて〔 130140 〕℃で脱水すると〔 分子間脱水 〕が起こり,ジエチルエーテルが生成する。(濃硫酸には脱水作用がある。)また,160170℃では〔 分子内脱水 〕が起こり〔 エチレン 〕が生成する。

 
 

例題 分子式がC4H10Oで示される構造異性体には7種類ある。これらの異性体を次の指示に従って分類し,構造式で記せ。

(1) 酸化するとアルデヒドを生じるもの  (2) 酸化するとケトンを生じるもの

(3) 酸化されないが金属ナトリウムと反応し水素を発生するもの

(4) 金属ナトリウムと反応しないもの

 

 C4H10Oは例題167

(1) CH3CH2CH2CH2OH  CH3CH(CH3)CH2OH   (2) CH3CH2CH(OH)CH3  
 
 (3) (CH3)3COH

(4) CH3OCH2CH2CH3  CH3OCH(CH3)CH3   CH3CH2OCH2CH3